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日本人口学会賞

本学会では1988年に日本人口学会賞授与規定を制定し、人口学分野における、会員の優れた業績に対して2年ごとに種々の賞を授与してきました。当初は学会賞と学会奨励賞の2つのみでしたが、1996年に学会特別賞を新設し、2002年より学会奨励賞を優秀論文賞と普及奨励賞に二分したことにより、現在は以下のとおり4つの賞を設けるに至っています。

日本人口学会第15回学会賞選考結果を下記の通り発表する。なお今回選考対象となったのは2013年と2014年の2年間における会員の業績である。

第15回(2016年)受賞者

1.学会賞
<受賞者> 澤田 佳世
<対象業績> 澤田 佳世(2014)『戦後沖縄の生殖をめぐるポリティクス―米軍統治下の出生力転換と女たちの交渉』大月書店
<理由> 本書は、本土とは異なった沖縄の「出生転換の道程」とその背景を探った人口社会学的研究である。沖縄の米軍統治という歴史的・政治的特殊環境の中で、女性の家族内および社会的地位と出生転換がどのように進んで行ったのかを女性学の視点から多面的に分析した力作である。人口学的分析を踏まえつつ、多くの文献資料の収集、政策担当者からのヒアリング、個別面接調査などの質的データの分析を行うことによって、沖縄の出生力転換を生き生きと描きだしている。沖縄の高出生率が出生調節の供給面(中絶・避妊)において本土とは異なった歴史を歩んだことで、本土の出生力転換から15年遅れとなっているためであることを明らかにした意義は大きく、日本人口学会賞にふさわしい業績と考えられる。
2.優秀論文賞(2編)
<受賞者> 永瀬 伸子
<対象業績> 永瀬 伸子(2014)「育児短時間の義務化が第1子出産と就業継続、出産意欲に与える影響:法改正を自然実験とした実証分析」『人口学研究』第50号(第37巻第1号), pp.29-53.
<理由> 本論文は、雇用制度(短時間オプションの義務化)の企業規模による導入の時間差を「実験」と捉え、具体的政策による出産意欲、就労意欲の向上に及ぼす効果を計測するというアイデアとその結果に基づく政策提言を強く意識した論文である。自然実験という手法を用いた政策効果の精密な検証は、少子化対策に関して大きな役割を果たすものと評価でき、主題となるテーマも論争的であり、今後の発展が期待される。よって、優秀論文賞にふさわしい業績と考えられる。
<受賞者> 是川 夕
<対象業績> 是川 夕(2013)「日本における外国人女性の出生力 ― 国勢調査個票データによる分析 ―」『人口問題研究』第69巻 第4号,pp.86-102.
<理由> 本論文は、外国人女性の出生力について、移動者の社会経済的属性の差(属性効果)、移動前後の出生力の変化(中断/イベント相関効果)、定住化の影響(社会的適応/社会化効果)について国勢調査の個票データを用いて明らかにした論文である。人口減少社会において予想される移民増大の影響を考察するための基礎的なエビデンスを提供する意義に加えて、国勢調査の個票データの利用に先鞭をつけた研究として評価できる。よって、優秀論文賞にふさわしい業績と考えられる。
3.普及奨励賞
<受賞者> 松田 茂樹
<対象業績> 松田 茂樹(2013)『少子化論―なぜまだ結婚、出産しやすい国にならないのか』勁草書房
<理由> 本書は、少子化の要因と対策について幅広い観点から考える諸視点を、専門家以外にも分かりやすく論じた著作である。家族の変化、若年層の雇用環境の変化、父親の育児参加、企業の両立支援など話題は多岐にわたり、都市と地方で状況の違いに応じた対策の必要性を指摘している点や国際比較を基にした包括的な議論が評価できる。また、「少子化克服への道」として掲げられる政策提言は、一部論争的なものも含まれるが学術的知見に基づき説得力のあるものとなっており、少子社会の理解を促進するための著作として評価できる。よって、普及奨励賞にふさわしい業績と考えられる。
4.学会特別賞
該当なし

過去の受賞者および対象業績


  学会賞 優秀論文賞(第8回より) 普及奨励賞(第8回より) 学会特別賞(第5回より制定)
*第7回までは「学会奨励賞」を示す
第1回(1988年) 小林和正『東南アジアの人口』 稲葉寿「多次元安定人口論の数学的基礎Ⅰ」、南亮三郎監修『人口論名著選集』
第2回(1990年) 大淵寛『出生力の経済学』 該当なし
第3回(1992年) 該当なし 該当なし
第4回(1994年) 大谷憲司『現代日本出生力分析』 該当なし
第5回(1996年) 山口喜一ほか編『生命表研究』 該当なし 伊藤達也『生活の中の人口学』
第6回(1998年) 岡田實・大淵寛編『人口学の現状とフロンティア』

Osamu, Saito, "Historical Demography," Population Studies

若林敬子『現代中国の人口問題と社会変動』

速水融『歴史人口学の世界』
第7回(2000年) 坪内良博『小人口世界の人口誌』 該当なし 岡崎陽一『日本人口論』ほか
第8回(2002年)

山口三十四『人口成長と経済発展』

加藤久和『人口経済学入門』

金子隆一「人口統計学の展開」『日本統計学会誌』 阿藤誠『現代人口学』 該当なし
第9回(2004年) 稲葉寿『数理人口学』 該当なし 速水融編『歴史人口学と家族史』 小林和正・南條善治・吉永一彦『日本の世代生命表:1891~2000年期間生命表に基づく』
第10回(2006年) 該当なし 鈴木允「明治・大正期の東海三県における市郡別人口動態と都市化:戸口調査人口統計の視点から」『人文地理』 早瀬保子『アジアの人口:グローバル化の波の中で』 該当なし
第11回(2008年) 該当なし 小林淑恵「結婚・就業に関する意識と家族形成-循環モデルによる検証-」『人口学研究』 和田光平『Excelで学ぶ人口統計学』 大友篤『続 人口で見る世界-人口変動とその要因』
第12回(2010年) 平井晶子『日本の家族とライフコース ―「家」生成の歴史社会学―』 林玲子「Long-Term World Population History: A Reconstruction from the Urban Evidence」『人口学研究』 鬼頭宏『図説 人口で見る日本史 縄文時代から近未来社会まで』 河野稠果『人口学への招待-少子・高齢化はどこまで解明されたか』その他
第13回(2012年) 津谷典子, Wang Feng, George Alter, James Z. Lee(他)『Prudence and Pressure: Reproduction and Human Agency in Europe and Asia, 1700-1900』 (2編)
鎌田健司・岩澤美帆「出生力の地域格差の要因分析:非定常性を考慮した地理的加重回帰法による検証」『人口学研究』
福田節也 "Leaving the Parental Home in Post-war Japan: Demographic Changes, Stem-family Norms and the Transition to Adulthood," Demographic Research (Max Planck Institute for Demographic Research)
人口学研究会(編)『現代人口辞典』 小川直宏(下記を含む一連の業績)
Shripad Tuljapurkar, Naohiro Ogawa, Anne H. Gauthier (eds.), “Ageing in Advanced Industrial States” (Riding the Age Waves ? Volume 3)
第14回(2014年) 阿藤 誠,西岡八郎,津谷典子(他)『少子化時代の家族変容 パートナーシップと出生行動』 (2編)
寺村絵里子「女性事務職の賃金と就業行動-男女雇用機会均等法施行後の三時点比較-」『人口学研究』
小池司朗「地域メッシュ統計の区画変遷に伴う時系列分析の可能性に関する一考察―測地系間・メッシュ階層間の比較から― 」『人口問題研究』
浜野潔『歴史人口学で読む江戸日本』 阿藤誠(下記を含む一連の業績)
阿藤誠ほか『少子化時代の家族変容 パートナーシップと出生行動』、『現代人口学』、『先進諸国の人口問題 少子化と家族政策』など
第15回(2016年) 澤田 佳世『戦後沖縄の生殖をめぐるポリティクス―米軍統治下の出生力転換と女たちの交渉』 (2編)
永瀬 伸子「育児短時間の義務化が第1子出産と就業継続、出産意欲に与える影響:法改正を自然実験とした実証分析」『人口学研究』
是川 夕「日本における外国人女性の出生力 ― 国勢調査個票データによる分析 ―」『人口問題研究』
松田 茂樹『少子化論―なぜまだ結婚、出産しやすい国にならないのか』 該当なし

選考理由アーカイヴ(第10回以降)

過去の選考理由


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First drafted August 30, 2000
Last revised on April 29, 2017